なぜ『ジョジョ』第7部のEDは洋楽じゃなくなったのか? アニメビジネスの現場から考える

アニメ

『ジョジョの奇妙な冒険 スティール・ボール・ラン』が始まった。

Netflixを中心に世界で展開され、かなり話題になっている。

そして作品以上に話題なのが…エンディングの曲。

今回のEDは、千葉雄喜「生きるか死ぬか」

(僕も詳しくはなかったけど「チーム友達」の人といわれてピンときた)。

これについては、

「ジョジョに合ってない」

「今までのEDと違いすぎる」

「なぜ洋楽をやめたのか」

みたいな声もあるらしい。

今回は曲の良し悪しについては置いておきたい。

なぜ今回、ジョジョは「洋楽」ではなく「オリジナル楽曲」を選んだのか?

その背景をビジネスの面から考えたい。

ちなみに筆者は、上京に際して、ジョジョ全巻だけを持って行ったくらいにはジョジョ好きです。


ジョジョのEDといえば、洋楽だった

まず、これまでの『ジョジョ』を思い出してほしい。

第1部から第6部まで、エンディングには印象的な洋楽が使われてきた。

「Roundabout」をはじめ、作品の余韻を一気に持っていくような名曲が並んでいる。

個人的に好きなのは5部後期のEnigma「Modern Crusaders」。

(Enigmaは4部やんけ、とか言わない)

これが『ジョジョ』アニメの大きな特徴だった。

本編が終わる。

そして洋楽が流れる。

それだけで、独特の余韻が生まれる。

今でも覚えている。みんなが不安の中固唾をのんで見守った第1部第1話の放送。めちゃくちゃ面白い本編のラストにイエスが流れて「勝った…!」と思った。

原作が持っている音楽カルチャーとの相性もいい。

だから、

「ジョジョのED=洋楽」

というイメージはかなり強かったと思う。

そんなシリーズが、第7部になって突然、

日本語のヒップホップ。しかも書き下ろしの新曲。

そりゃ話題にもなる。


既存の曲を使うか、新しく曲を作るか

アニメの主題歌を考えるとき、ものすごく単純化すると、こんな2つのやり方がある。

①すでにある曲(既存曲)を使う。

洋楽など、世の中にすでに存在している曲を借りてくる。

② 新しく曲を作る

アニメのためにアーティストへ楽曲を依頼する(この場合はカバーも含む)。この2つ、同じ「ED曲」でも、ビジネスの構造は結構違う。

ざっくり図にするとこうだ。

【既存曲を使う場合】

作品
↓
「この曲を使いたい」
↓
権利者と交渉
↓
使用料を支払う
↓
アニメで使用
↓
作品の価値・宣伝効果につながる

つまり、

お金を払って、すでにあるコンテンツを借りる。


【新曲を作る場合】

作品
↓
アーティストに楽曲制作を依頼
↓
新しい楽曲が生まれる
↓
アニメで使用
↓
配信・SNS・ライブ・タイアップなどへ展開
↓
曲そのものにも価値が生まれる

こっちは、

アニメをきっかけに、新しいコンテンツを一個作る。

この違いは結構デカい。


既存曲、特に洋楽は出銭が多く収入はほぼない

もちろん、既存曲を使うことにも大きなメリットがある。

知っている曲なら、それだけで印象に残る。

『ジョジョ』の場合は、それが作品の伝統にもなっていた。

ただし、当然ながらタダでは使えない。

音楽には、作詞・作曲などに関する権利がある。

さらに、

「その曲の音源そのものを使わせてもらう」

となると、原盤に関する権利も関係してくる。

つまり、すでに存在している有名曲をアニメで使おうと思ったら、

「この曲を使っていいですか?」

だけでは終わらない。

いろいろな権利を確認して、条件を決めて、使用料(原盤利用料)を払う。

僕も業界で経験があるけど、

「音楽って、そんなにするの?」

ということは普通にある。

もちろん曲や条件によって全然違うので、一概に「○万円」と言える話ではない。(ぶっちゃけ言い値…)

ただ音楽に数百万円、場合によってはそれ以上のお金が動くイメージで、制作側からすれば無視できない金額です。

しかも、そのお金は基本的には、出銭でしかないんですね。


新曲を作ると、著作権収入が発生する

じゃあ、アニメのために新しい曲を作ったらどうなるのか。

もちろん、制作費はかかる。

だから、

「新曲ならタダ!」

という話ではない。

しかし、タイアップの場合、制作費はレコード会社などが背負い、

既存曲に発生した「原盤利用料」はタイアップとして無償にするケースが多い。

そして、新曲には既存曲にはないものがある。音楽著作権収入だ。

大体の場合、主題歌に起用した製作委員会にも、音楽著作権の一部を受け取る権利が発生する。

それにより、以下の回路が成り立つ。

アニメで流れる。

↓

音楽配信される。

↓

YouTubeで聴かれる。

↓

SNSで使われる。

↓

ライブで演奏される。

↓

別のCMやタイアップにつながる。

ということが起こり得る。

つまり、アニメのために作った曲が、

アニメの外でも動き始める。そして、お金を生む。

ここが、既存曲との大きな違いだ。


簡単にまとめるとこういうこと

もっと単純にしてしまうと、

既存曲

「借りる」

↓

使用料を払う(原盤利用料)

↓

著作権は製作委員会が保有しないので、著作権収入発生せず


新曲

「作る」

↓

作品を盛り上げる

↓

曲そのものが広がる

↓

音楽配信・ライブ・タイアップなどにつながる可能性

↓

製作委員会にも著作権収入が発生する


もちろん実際の権利関係や収益分配は、契約によって変わるけど…

既存曲は「コストを払って借りる」

新曲は「コストをかけて新しいコンテンツを作って、著作権収入のチャンスを得る」

と考えると分かりやすい。


主題歌は「作品のおまけ」じゃない

ここが、僕が今回一番面白いと思っているところだ。

主題歌って、昔はもっと単純に、

「アニメの最後に流れる曲」

くらいに考えられていたと思う。

でも今は違う。

アーティスト自身にファンがいる。

曲そのものにファンがつく。

TikTokやYouTubeで曲だけが切り抜かれて広がる。

ライブで歌われる。

CMに使われる。

そうなると、

主題歌そのものが一つのコンテンツになり、お金を生む。

具体的にわかりやすい例は「Mrs. GREEN APPLE」。

Mrs. GREEN APPLE OFFICIAL SITE|OFFICIAL FAN CLUB 「Ringo Jam」
Mrs. GREEN APPLEのオフィシャルサイト・ファンクラブサイト。2024年3月フルリニューアルオープン!最新情報やファンクラブ限定チケット先行受付など、今後も続々と新コンテンツが登場予定です。

今ほど売れる前はいろんな主題歌(それこそアニメも)タイアップをやっていたけど、

その後これだけ大ヒットして過去曲も聞かれて、何かの主題歌だった曲が別途CMにも起用されて。

それによりいろんなアニメやドラマ、映画の製作委員会にかなりの金額の著作権収入が発生している。方々の音楽出版会社が今、ミセスには足を向けて寝られない状態だ。

参考:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF209IT0Q6A520C2000000/


ここからは「SBR」を取り巻くビジネス環境の推測

ここから先は、完全に推測だが…

今回の『ジョジョ』第7部が、

「これまで通り洋楽を使う」

ではなく、

「新しい楽曲を作る」

という方向に変えた理由。

もちろん、

「千葉雄喜さんの曲が作品に合うと思った」

というクリエイティブ上の判断は当然あるだろう。

ただ、ビジネスの側から見ると、

「音楽という新しい収益の回路を作る」

という必要性があったんじゃないだろうか。

具体的にもっと踏み込むと、第7部「Steel Ball Run」の原作は、週刊少年ジャンプでの連載を途中からやめて、ウルトラジャンプ連載に変更になっている。

今のアニメビジネスにおける「週刊少年ジャンプ」の持つ力は絶大だ。それこそ聖なる遺体くらい奪い合われている。

そんな週ジャンの「聖なる力」が弱いと判断された結果、

ビジネスの回路を増やす判断があったのでは?という推測は成り立つのだ。


もしかすると、「ED曲を変えた」だけじゃないのかも

収益の回路を増やす判断をした、という意味でED主題歌のことを捉えるならば、

ほかにもいろいろと展開の仕方は変わってくるのかもしれない。そしてその成否が8部以降のアニメの実現を左右するのかもしれない。

7部の大ファンとして、不安が無いといえば噓になる。

だが、だが!待ってほしい。


俺たちはまだ対応者に過ぎない…

俺たちはまだ、7部序盤の大トロ

リンゴォ・ロードアゲイン に出会っていない。

まだ俺たちは、アニメ版Steel Ball Runが『男の世界』に入門を果たしているのかを確かめられていない。

いろんな意味で、7部アニメにジャッジを下すのは、

『男の世界』を見届けてからでもいいのではないだろうか。

甘ったれた社会の価値観に反して、真の勝利の道を行っているかどうかは、

もう少し判断を待ってもいいんではないだろうか。

だってあの般若さんも、主題歌の件であれこれ言っているうちはまだ対応者に過ぎないって言ってるし…

←To Be Continued

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