「誰もやらなかった」を実現する。それが企画の仕事だと思う。

2026年夏アニメを見ていて、改めて思ったことがある。

面白い作品には、必ず「誰もやらなかったこと」がある。

でも、それだけじゃ足りない。

誰もやらなかったことを、

ちゃんと面白い形で実現して、世の中に届ける。

そこまでできて初めて、企画になる。

今期は、そのことを強く感じさせる作品がいくつもある。

『さよならララ』は、セルアニメを令和に持ち込んだ。

まず驚いたのは『さよならララ』。

人魚姫が琵琶湖に現れるという設定も面白い。

(琵琶湖を自転車で一周したことがある身としては、なおさら楽しい。)

でも一番驚いたのはオープニングだった。

セルアニメーション。

今ではほとんど使われなくなった、本物のセル画による映像表現。

詳しい知識がなくても、

「あ、なんか違う」

と分かる。

独特の揺らぎ。

色の乗り方。

光の柔らかさ。

デジタルでは出ない空気がそこにある。

もちろん、セルアニメを使わなくなった理由はいくらでもある。

セルそのものが手に入りにくい。

撮影設備も少ない。

コストも時間もかかる。

つまり、

「誰もやらなかった」のではなく、「やれなかった」理由がちゃんとある。

その壁を越えて実現したこと自体が、企画としてすごい。


『ヤニねこ』も、実は同じだ。

以前も書いたけれど、『ヤニねこ』はコンプライアンス全盛の時代に、

「本当にこれ地上波で放送するの?」

という作品を成立させた。

普通なら、

「無理ですよね」

で終わる企画だったはず。

それでも実現した。

しかも作品として面白い。

だから企画として成立した。


『鉄鍋のジャン!』も同じだった。

『鉄鍋のジャン!』も、

昔の漫画をそのままアニメ化したわけではない。

令和という時代だからこそ、

「過激さ」

を前面に押し出した。

そして「お断り」をネタにすることで、

コンプライアンスそのものまでエンタメにしてしまった。

これも、

原作の魅力をどう現代に届けるか

という企画の勝利だったと思う。


「誰もやらなかった」は、失敗しやすい。

ここが一番難しい。

誰もやらなかったことは、

大抵、やれなかった理由がある。

だから新しい挑戦のほとんどは失敗する。

でも、

その壁を越えて、

ちゃんと面白くして、

みんなに受け入れられる形にする。

それが企画なんだと思う。

ただ奇抜なことをやるだけではない。

新しさと面白さを両立させる。

そこに価値がある。


原作ありでも、オリジナルでも。

今回面白かったのは、

『さよならララ』はオリジナル作品。

『ヤニねこ』や『鉄鍋のジャン!』は原作付き。

立場は全然違う。

でも、

企画としてやっていることは同じだった。

作品の魅力を信じ、

高いハードルを越え、

新しい価値を作る。

原作があるかどうかは関係ない。

企画の本質は変わらない。


この夏アニメは、「企画」が面白い。

もちろん作品自体も面白い。

でも今年の夏アニメを見ていて一番感じるのは、

企画そのものが面白い。

「どうやってこれを通したんだろう。」

「誰が最初に言い出したんだろう。」

そんなことばかり考えてしまう。

普通の視聴者とは少し違う楽しみ方かもしれない。

でも、エンタメ業界にいた人間としては、

作品の裏側にある企画やプロデュースに、どうしても目が行く。

そして今期は、

そんな”企画の面白さ”を存分に味わえるシーズンだと思う。

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