『ちいかわ』映画、公開前の予想を答え合わせ

アニメ

以前、こんな記事を書いた。

「『ちいかわ』の映画はなぜ100億円に行くのか?」

……と。

すみません。

100億どころじゃありませんでした。

僕の予想、普通に外れました。

いや、100億というライン自体は超えた。

超えたんだけど、そんなレベルの話じゃなかった。

『ちいかわ』映画はその後も興行収入を伸ばし、ついには歴代でも上位に入る規模のヒットになった。

これはもう、いわゆる「大ヒット」という言葉だけでは足りない。

社会現象と呼んでも差し支えない領域まで来たんじゃないかと思う。

ということで今回は、映画を実際に観たうえで、

「じゃあ、なぜここまでヒットしたのか?」

を、公開前に自分が考えていたことと答え合わせしてみたい。

結論から言うと、僕はやっぱり、

「ちいかわというIPの強さを、映画チームが信じ切ったこと」

が大きかったんじゃないかと思っている。

① 原作を変にいじらなかった

まず、一番大きかったと思うのがこれ。

原作にかなり忠実に、ちゃんと映画を作ったこと。

これ、当たり前のように見える。

でも、実際には結構大事だと思う。

今回の映画について、

「芸能人タレントを声優に起用しなかった」

ということが話題になったりもした。

ただ、僕はこれについては、

「それはそうだろう」

と思っている。

もちろん作品によっては、タレントを起用することで話題を作ったり、新しい客層を呼び込んだりすることはある。

原作のパワーがまだ十分ではない作品に、いわば「下駄を履かせる」ためにキャスティングを工夫する。

そういうことは普通にある。

でも、『ちいかわ』の場合は事情が違う。

すでに原作そのものが、とんでもない規模のIPになっている。

そんな作品に対して、

「よし、ここに有名タレントを入れて話題を作ろう!」

となる必要が、そもそもあまりない。

むしろ、

「ちいかわを好きな人が、ちいかわを見に来る」

という状態を壊さないことのほうが重要だったんじゃないかと思う。

つまり、

原作の力を信じる。

これをやった。

結果として、それが市場にもきちんと合っていた。

② 入場者特典が強すぎた

そして、もう一つ。

これは公開前の記事でも書いたけど、

入場者特典が強い。

いや、強すぎる。

ちいかわという作品は、もともとグッズとの相性がものすごくいい。

世の中にあるちいかわグッズを全部追いかけようとしたら、たぶん生活が破綻する。

スーパーに行けばいる。

コンビニに行ってもいる。

専門店に行けばもちろんいる。

もはや、

ちいかわから逃げて生活することのほうが難しい。

そんなIPが映画館に来て、

「じゃあ入場者特典、何を出す?」

となった。

そこで出てきたのが、

ボンボンドロップシール。

……恐れ入りました。

しかも、ただの映画ビジュアルを使った紙とかじゃない。

ちゃんと欲しくなるグッズを持ってきた。

僕自身、もらいに行った。

やっぱり強い。

さらにチャームもあった。

映画の内容に関連したデザインだったり、クライマックスのシーンを使ったものだったり。

そして、ナガノ先生の描き下ろしを載せた冊子まである。

これは、ちいかわファンからしたら相当嬉しいだろう。

僕はスケジュールの都合で全部は取りに行けなかったんだけど、ちいかわ好きの友人からもかなり満足度が高かったという話を聞いた。

そりゃそうだ。

欲しいもん。

映画を観る。

↓

特典がもらえる。

↓

次の特典も欲しくなる。

↓

また映画館に行く。

この循環が成立する。

もちろん、特典を用意する側はめちゃくちゃ大変だったと思う。

特にボンボンドロップシールを、全国規模で大量に用意する。

これ、簡単な話ではない。

景品表示法などによる制約もある。

だからこそ、

「よくここまでやったな」

と思う。

そして映画館の値上がりも、今回は追い風になったと思う

これは少しビジネスの話。

映画の入場者特典には、景品表示法上の制約がある。

一方で、最近は映画館のチケット価格も上がっている。

映画館によって価格は違うけれど、一般料金が2,000円前後になるケースも珍しくない。

つまり、昔よりも「入場者特典に使える金額」の余地が広がっている。

#映画ちいかわ の興行収入は、客層から言って今後どんな入場者特典を用意できるかだと思う。
景品表示法があるので、大体400円以内のアイテムを用意することになる。

とは言えかなり立派な作りの第一弾のチャームが400円以内なので、それなりのアイテムは用意できると思うので今後にも期待。… pic.twitter.com/GDWdvzum79— ラッコマン@エンタメ業界 (@vieeeet) July 27, 2026

もちろん、それだけでボンボンドロップシールのようなものが実現できるわけではない。

大量生産によるコストダウンや、製造・物流・配布まで含めた調整が必要になる。

それでも、

「映画料金が上がったことによって、映画そのもの+αの価値を作りやすくなった」

という側面はあると思う。

ちいかわは、そこをかなり上手く使ったんじゃないだろうか。

③ 「映画館で見る意味」がちゃんとあった

そして、もう一つ。

これは実際に観てみて、かなり感じた。

映画館で見る意味がある。

特に音。

これがかなり良かった。

SE、音楽、声、空間の使い方。

映画館の音響で見ると、

「ああ、これは映画館で観るために作ってるな」

と思える。

そして何より、

もう一回観たくなる。

これが強い。

ちいかわって、もともと短い漫画やアニメーションだからこそ、

「わざわざ映画館に行って見る意味って何なんだろう?」

という問いはあると思う。

家でも見られる。

スマホでも見られる。

YouTubeでも見られる。

それなのに、映画館に行く。

そのためには、

「映画館で見ると、家で見るのとは違う」

という価値が必要になる。

今回の映画には、それがちゃんとあった。

結局、全部「ナガノ先生の力を信じた」につながる

ここまでの話をまとめると、僕は結局ここに行き着く。

ナガノ先生のクリエイティブと、原作の力を信じた。

これなんじゃないかと思う。

もちろん、それを形にした映画のクリエイティブチームがいる。

ビジネスサイドもいる。

配給もいる。

劇場もいる。

入場者特典を作る人たちもいる。

ものすごい数の人間が関わっている。

その中で、今回のチームがやったことは、

「ちいかわだから、これでいい」

と雑に考えることではなく、

「ちいかわだからこそ、ナガノ先生の作るものをちゃんと届けよう」

という方向だったんじゃないかと思う。

これは、IPビジネスではかなり重要なことだと思う。

原作を「変える」ことが正解とは限らない

エンタメ作品には、いろんな作り方がある。

原作を大きく改変する。

監督の作家性を強く出す。

原作を再構築する。

まったく新しい解釈を加える。

そういう作品もある。

例えば、原作とはかなり違うものを作りながら、それでも名作になる映画もある。

だから、

「原作に忠実なのが正解」

という話ではない。

作品によって正解は違う。

ただ、今回の『ちいかわ』については、

「原作の力を信じる」

という判断が、ものすごくハマったんじゃないかと思う。

すでに強いIPなのだから、その魅力を変に加工するより、

その魅力を映画館という場所で最大化する。

その方向に振り切った。

僕には、そう見えた。

100億予想は当たった。でも、見誤った

ということで、最初の記事に戻る。

僕は、

「『ちいかわ』は100億円に行くんじゃないか」

と書いた。

結果として100億円は超えた。

なので、

「よっしゃ、予想的中!」

と言いたいところなんだけど。

ごめんなさい。

全然違いました。

僕が想定していた100億円というラインを、はるかに超えてしまった。

これはもう、

「100億行くかどうか」

という話ではなかった。

「どこまで行くんだ、これ」

というコンテンツだった。

まとめ。強いIPを、強いまま映画にした

今回の『ちいかわ』映画を見て改めて思った。

ヒットの理由を一つに絞ることはできない。

原作そのものの強さがある。

それを信じたクリエイティブがある。

映画館で見る価値を作った。

そして、入場者特典という「もう一度行きたくなる仕掛け」もあった。

それぞれが別々に存在しているのではなく、

全部が「ちいかわを好きな人に、ちいかわをちゃんと届ける」という方向に向いていた。

これが強かったんじゃないかと思う。

映画って、結局は巨大なチーム戦だ。

原作が強くても、映画にする段階でその魅力を失うことはある。

逆に、原作の魅力を理解して、それを映画というフォーマットに合わせて最大化できれば、とんでもないものになる。

今回の『ちいかわ』は、その成功例の一つだったんじゃないだろうか。

そして僕は、もう一回観たい。

普通に面白すぎた。

ということで、最後に一言。

「『ちいかわ』は100億行く」

と書いた僕へ。

すみませんでした。

200億級のコンテンツでした。

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